感 性

世の中には説明に窮する大切な言葉があり、表題の「感性」もその類であろう。

 そして、その「感性」はとくに人の内で、芸術の世界、文学の世界で躍動しそうである。

 私の尊敬する柳田邦男氏は、私たち大人に対し「感性を高めるために絵本を見なさい」と呼び掛けている。私は宮沢賢治の100編の童話を20年間読んで画にもしてみた。彼の童話に触発された画家は数多くおり賢治の童話の全てにわたって「絵本」が描かれている。

「絵本」は良い絵本を選ぶ必要があるが、その手間を考えると賢治原作の絵本を見るのも一方法と思う。

柳田邦男氏の言葉に意を強くしてこのエッセイを書き始めたが、彼の人柄が書かせたとも言える。私が氏をお見掛するのはNHKテレビの災害調査結果や陸海空の交通事故調査結果の解説である。氏の視点は徹して人道主義である。人命、あるいは人の心を大切にしている。それは、彼の話しぶりに滲み出ている。いま一つ、氏と身近感を覚える事がある。宮沢賢治が名付けた「イーハトーブ」には遠野市を舞台にした民族学の柳田国男がいる。彼と柳田邦男の名は国男と邦男の一字違いである。その「イーハトーブ」「花巻市」「遠野市」「陸前高田市」を訪れた。人々の故郷への思いにただ黙祷するだけであった。東日本の未曾有の災害に対し世界中で賢治の「雨ニモマケズ」の詩が朗読された。世界中の人はつまるところ“感性”で賢治の詩の中に美を感じたのではなかろうか。

 2015年の夏の旅はグループ銀河鉄道読書会メンバーとの楽しい思い出も出来た。旅の思い出と宮沢賢治や二人の柳田氏のイメージが重なっている。         By Ginga Taro